背景

>>>>会社の概要>>>>

 A社は日本人によってなされたある画期的な発明を工業化しようと約70年前に設立されました。当初はいろいろ波乱万丈の時期もありましたが、先人たちの苦労により困難を乗り越え、戦後急成長してまいりました。会社は種々の電気部品を製造しており、VTRやコンピュータ記憶装置の部品の需要増に対応するため約20年前に山梨県に工場が建設されました。また長野県にも同種の部品の生産工場があり、その工場とも連携して生産をしております。
 建設以来特にコンピュータ記憶装置の部品の需要は急激に増え続け、増産に継ぐ増産で工場の規模は拡大し、我々は夜を昼に継いで働いてまいりました。

>>>>昨今の状況>>>>

 世の中の不況に伴う携帯電話やコンピュータなどの売れ行きの減少に伴い、その部品も当然販売減となりました。そしてついに会社は赤字に陥りました。会社が赤字になったのは26年ぶりで、それも、それ以前は連結決算の形態がちがうため比較ができないためこの数字であると聞いております。
 当山梨県の工場も例外ではなく、特にコンピュータ記憶装置部品の需要低迷と値下がりから、当工場の所属する事業本部は全社の中でも特に大きな赤字を背負う結果となりました。当然費用圧縮、残業規制、人員配置の見直し、業務効率向上の指示などの赤字対策が次々と打ち出され、実施されてまいりました。

>>>>そんなところへ>>>>

 そんな状況の中、去年から今年にかけて、当工場の主要生産ラインが別の工場に集約されるとか、会社が大幅なリストラを計画しており50歳以上の人は退職を勧められることになるとか、どこどこの部門は大幅縮小あるいは撤退の計画だとか、いろんな噂がながれ始めました。どれも本当にありえる話で、みな心中穏やかではありません。
 正式発表前に心の準備をさせるためにわざと噂を先に流すのはよくある手、とは聞いておりますが、これもそうだったのでしょうか。

>>>>そして...>>>>

 そして、ついに我々の将来を決断すべきある発表があったのです。


 ...「2.事の発端」へと続く